名工大 D38 同窓会

名工大 D38 同窓会のホームページは、卒業後50年目の同窓会を記念して作成しました。

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前田・宮口・三山
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ラ・ボエシの自発的隷従論について、鈴木直久

今朝(8月25日)の朝日新聞のオピニオン「長期政権のわけ」に西村 修教授の「自発的隷従が支える圧政」と題する発言が掲載されている。

同紙を購読する方は読まれたことだろうから、少し補足させていただこうと思う。

 

自発的隷従論は16世紀にフランスのラ・ボエシが唱えた。直訳すれば『意思の隷従』となるが、荒木昭太郎氏は『奴隷的隷従を排す』と訳されているという。

 

わたしはそのことよりもラ・ボエシ(1530-1563)という名前に少々驚いた。モンテーニュ(1553-1592)の『エセー』を読んで知った名前だからである。モンテーニュと彼はボルドーの高等法院時代の同僚であり無二の親友となった。ラ・ボエシは三つ年上であったが、ペスト?によって33歳で夭折してしまった。

彼については『エセー』(岩波文庫)第一巻の第二十八章「友情について」に紹介されており、五年前にも読んだ。

また三年前に読んだ、堀田善衛のモンテーニュの評伝『ミシェル城館の人』(集英社)第一巻にかなり詳しく紹介されている。

ZOOMでテレ会話

10月に大学の同窓会が企画されていましたが、コロナ禍で会食等が自粛の風潮の中、中止されました。過去、信州で行われた同窓会以来、約2年間同窓の諸君とは、関東、関西圏で行われているゴルフ、忘年会等の個別グループ毎の会合以外逢う機会がありません。

そこで、息子や娘、いや最近では孫達が行っているテレワークを利用して、テレ会話が出来ないかと思い模索していました。そこで、調査の結果、ZOOMというソフトが100人希望で40分なら無料で使用できるサービスを行っていることが判りました。そこで、急遽、皆さんにメールしたところ、山本雅、竹崎、矢田さんが応答くださり、私を含めて4名でテレ会話を行いました。

その後、生信さんが準備が出来ていること、宮口さんがWEBカメラの購入を検討していることが判りました。従って、近々、2回目のテレ会話を企画しています。

実は、私は、先回ではタブレットを使って行いましたがカメラが付いているとは言え、数年前の安物のタブレットだったのでカメラの精度が悪く、暗い画面でした。そこで、11年目の東芝製のパソコンに外付けのWEBカメラをアマゾンで探しました。中国製の2,000円程度の安物でしたが、アメリカの監視カメラの大部分が中国製で安全上問題だとトランプ大統領が騒ぎましたが、今や中国の技術は無視できないほど進んでいることが今回実感しました。

下の写真は、そのカメラです。右はタブレットです。次回は、このカメラでテレ会話を行います。

他の皆さんも、準備が出来れば、ご参加ください。私が招待のメールを送り、それに記載のホームページをオープンするだけで繋がるのです。

最近、家内の誕生日を、息子家族、娘家族と我々夫婦と3箇所を繋いで祝いました。今夜は、会社の同期と焼酎、ビール、ワインと各自好みの飲み物持参で、夕食後の会話を楽しむ会を企画しています。

 

ゲーテの「ファウスト」について、鈴木直久

わたしたちの年齢になると読書の対象に優先順位を付けざるをえない。特にページ数が多い本についてはそれが必須であると思う。

昨年7月にプルーストの「失われた時を求めて」を読み始めて、この4月に読了した。次にジョイスの「ユリシーズ」を読むつもりであったが、新型コロナウイルスの影響で市立図書館が休館したので借りることができなくなった。

 

そこで書棚の「ファウスト」を読むことにした。退職に際して本の大半を処分したが、ファウスト(高橋義孝訳新潮文庫、1968年発行)は残しておいたのである。(一)を読んだが(二)については途中で断念したままだったからである。

 

改めて(一)(第一部)から始めたが、(二)(第二部)に入ってやはり壁にぶつかってしまった。何が書かれているのかほとんど理解できないのである。第二幕は特にひどかった。それでもこれが最後の機会だと思って、活字を追うようにして一応読了した。クライマックスにおける有名なファウストのセリフ「とまれ、お前はいかにも美しい」は呆気なく、全く感動しなかった。

 

当然欲求不満が残った。

 

第一部は1806年に完成されたものであるのに対して、第二部は死の前年(1831年)に完成された。また、第一部は290ページであるのに対して、第二部は五幕構成で452ページもある。だから、「ファウスト」の核心は第二部にあるとされている。それがちんぷんかんぷんでは読んだことにならない。

 

それで新潮文庫の訳者の解説を読み直してみると、「第二部は、人間のさまざまな思念や欲望が絡みあって、いくつもの層をなしている立体的世界を貫いて上昇するところの、彼(ファウスト)の精神のひたすらなる登高を、それぞれの段階で、彼に作用する諸現象を客観的に描くことを通じて、表現しようとしている。従ってそれらの現象は、客観的事実であると同時に、あるいは比喩として、あるいは象徴として、主人公の精神の状況を写し出していることになる。」と書かれている。非常に抽象的な説明であり、ゲーテの思想がファウストの言動を通じて具体的にどのように表現されているか、それは成功したのか、あるいは詩劇としての魅力はどこにあるのかという、読者が最も知りたいことについて一切説明されない。

 

そこで岩波文庫(1958年)の解説を読んでみた。訳者の相良守峯は、第二部の構想のなかで次のように書いている。

「第二部は第一部ほど話の筋道が単純明瞭でない。否、この第二部の世界に足を踏み入れた読者は、さながら南国の植物が繁茂している中に錯綜する小道を辿る人のごとく、見通しのきかぬ迷路に踏み迷う心地がするであろう。」

わたしはまさにそのような心地がした。

 

さらに、「第一部を読んだ読者は必ずこの第二部をも読みとおさなければならない。第一部は断篇であって、これだけではゲーテが意図し、八十三歳にして完成したこの雄大な構想、もしくは彼が一生をかけて創造した有機的な「生」というものを究めずして終わることになるからである。ゲーテ自身第二部については「生涯の終わりにおいて、落ち着いた精神には、従前には考えられなかったような思想が現れてくる。」といって満足していた。」と書いている。

しかし、一生をかけて創造した有機的な「生」と従前には考えられなかったような思想がどのようなものであるかを訳者は具体的に説明しないし、わたしは理解できなかった。だからその「雄大な構想」も、「有機的な「生」も究めずして終わりそうである。

 

最も新しい集英社版(2000年)の訳者池内紀は、その解説のなかで次のように書いている。

「意味を解きあぐねているのは一般の読者だけではないようだ。ゲーテ学者達も又そうであって、夥しい『ファウスト』注解書は、第二部に至ると決まって原文以上に難解になり錯綜していく。」

これでは全く話にならない。意味を解きあぐねているのは池内さんも同じだと言いたくもなる。

 

文芸評論家の河上徹太郎は、1971年に発行された「西欧暮色」(河出書房新社)のなかの「ファウスト対ベートーヴェン」に次のように書いているという。

『一体この『第二部』とは何ものか? 怪力乱神の限りを尽くして倦むことがない。人間精神の限度、欲望の限りが完璧に描かれている。そこから連想して私は、これは文学のジャンルとしては、今日はやっている「漫画」の如きものじゃないかと思った』

精神の限度、欲望の限りが完璧に描かれているとわたしには思えないし、漫画のようなものだとは流石に言いすぎであろうが、硬骨漢の氏の感想であるから説得力を感じる。

 

「ファウスト」の文学作品としての最大の魅力は、むしろこの大規模な戯曲を韻文で表現したことにあるのだろうとわたしは推察しているが、残念ながらドイツ語だから全く手に負えない。

 

このような次第で、あまりにも有名な「ファウスト」の精髄が、少なくともわが国でほとんどまともに理解されていないようであることに気付いたので、敢えて一文をものしてみた。なんだ、そんなことをわざわざ書いたのかと思われた方には申し訳なく思う。

 

諸兄のなかに「ファウスト」を読まれた方がおられるなら、是非御所見をお伺いしたい。

癒しの音楽、シューベルトのピアノソナタ第13番を、鈴木直久

シューベルトのピアノソナタ第13番

 

新型コロナウイルスの流行によって滅入っている気分を、シューベルトのピアノ音楽で転換させてみてはいかがでしょうか。

 

すぐれているとされる後期のピアノソナタはとっつきにくいと感じて、長い間敬遠していましたが、あるふとしたきっかけで第13番の第一楽章を聞いてたちまち気に入り、それ以後の作品も聴くようになりました。

 

人気曲ですから多くの人の演奏を聴くことができますが、ここではリヒテルのそれをご紹介します。その演奏は重厚で格別味わい深いと思いますし、ライブ映像なので顔の表情と身体の動きを見ることができるからです。そのうえそのまま続けますと、日本でも人気のあるシフや他のピアニストの演奏を聴いて比較することができます。

 

https://www.youtube.com/watch?v=g38yqhpS340

桜と雪

皆さん、昨日の春のような気候、桜満開のところから、今日は真冬の寒さ、また、短時間であったが雪が降り、地面がすこし白くなるほど積もりました。

私は、早速、スマホの動画に収めました。というわけで、ホームページに載せることにしました。皆さんも、写真をお持ちなら送付ください。本当なら、動画でなく、写真でシャッターを遅く、調整すれば、桜と雪が上手く撮れたのかと思いました。

 

我が家の桜が咲いた、3月1日

今年は、暖かい日が続いたのか、今日、3月1日に花が咲きました。後にあるのは、先月中旬ぐらいから咲いている梅の花です。

皆さん、お元気ですか。久しぶりに投稿したので、近況をお知らせします。私が、心筋梗塞で、生死の間際まで行ったのが約11年前ですが、その間、2ヶ月毎の病院通いで診察を受けていました。ゴルフや海外旅行も通常通り外見は元気そうでしたが、この罹患者の行きつく先にある心房細動による不整脈がでてきました。昨夏に主治医から、このままだと心室の不整脈で心不全になると言われました。これは、いつ何処でも場所を選ばず倒れるということです。この治療のためにアミオダロン塩酸塩という薬を薦められました。

皆さんの中にも不整脈の方もおられると思いますが、私のような立場の方はいないと思います。上記薬は良く効くそうですが、副作用に腎臓、甲状腺等に対する他に肺炎、間質肺炎が患う怖い薬です。特に、私のゴルフ仲間の一人が心筋梗塞後に間質肺炎で亡くなりました。この事があり、先生の薦める薬も飲まず、昨夏からどうするか悩みながら、他病院の先生にも相談しながら決断を迫られていました。統計によると65%が自宅で心不全、35%が外出先で心不全で倒れているとあります。こんな中で昨年韓国旅行にびくびくしながらも行ってきました。自宅外で倒れれば、皆さんにご迷惑を掛けるし、いづれ、対策を迫れれていました。

結局、選んだ方法は、不整脈を防ぐためにICD(ペースメーカと心不全信号遮断機能がある。)を埋め込むことを選び1月中旬に手術しました。手術後1か月半が経過し、経過良好で安心しています。しかし、生活面では電子レンジ、IH調理器、駅改札等の磁気認証等々生活面で気を付けること多くあり、障碍者1等の手帳保持者になりました。ICDと心臓をワイヤーでつないでいるので激しい胸部近辺のスポーツは避け、ゴルフも3ヶ月以降と言われています。

以上、皆さんとお会いできる秋に近況としてお話しする積りでしたが、私事を披露の件ご容赦ください。

(2020/03/01  前田記)

上記桜が満開の写真です。この桜は、浦安市の園芸展で貰ったもの(毎年1回4月末に鉢植えを一鉢配布)で30cm位の大きさでした。現在、150cm位に育っており、浦安市内の公園等の咲き具合からすると早咲き桜です。                   (2020/03/09 前田記)

映画『第三の男』の音楽、鈴木直久

この映画(1949年製作)は、淀川長治が「映画の教科書ですね」と言っているくらいの名作で、わたしが見た最も面白い映画の一つです。この文章を書く前にDVDを見直しましたが、見飽きません。同感する方も多いことでしょう。

名場面の連続で、例えば、下のカットは三人の主人公のうちの一人、オーソン・ウェルズが演じるハリー・ライムが現れる有名な場面ですが、真っ暗闇から顔が浮かび上がり強烈な印象を与えます。しかも105分の上映時間のうち何と1時間以上経ってから登場するのです。

撮影を担当したのはロバート・クラスカーという人で、アカデミー賞の撮影賞(白黒部門)を受賞しました。

 

 

というようなわけで、書きたいことが山ほどあるのですが、今回はその音楽に絞って書くことにします。

音楽を担当したのは、ご承知のように、ウィーンのツィター奏者アントン・カラス(1906-1985)です。

彼は12歳からツィターの演奏を始め、流しのツィター弾きとして妻子四人を養っていました。

ウィーンの居酒屋で演奏中に、この映画のロケのためにウィーンに来た監督のキャロル・リードに偶然見出され、音楽担当者に抜擢されました。そして『第三の男』の作曲の間は、ロンドンのキャロル・リード邸に住み込んで、映像を見ながら作曲の作業を行いました。

「カラス、俺を生き返らすような曲を弾いてくれ!」とリードは言ったそうです。

『第三の男』の成功により、彼は1949年9月にはバッキンガム宮殿で国王ジョージ六世の前で演奏しました。1951年にはヴァチカンでローマ法王の前で演奏しました。そして1976年のリードの葬式では未亡人の要望により「ハリー・ライムのテーマ」を演奏したといわれています。

しかし、この映画はウィーンの描かれ方などについて地元では当初から不評であり、その協力者であるカラスには嫌がらせも少なくありませんでしたが、彼はこれに耐えてウィーンに住み続けました。

音楽はツィターの演奏のみですから、その魅力を100%味わうためには全編を見なければなりません。ここではオープニングと有名なラストシーンの二つをご紹介します。

下のカットはオープニングの映像で、横に張ってあるのはツィターの伴奏弦であり、「ハリー・ライムのテーマ」の流れに従って振動します。

 

https://www.nicovideo.jp/watch/sm16335524

 

 

わたしは会社に入ったころ神戸の三宮の映画館で初めてこの映画を見たのですが、このオープニングのツィターのメロディーを聴き、弦の振動を見て、期待で胸が益々高鳴ったことを記憶しています。

 

ラストシーンは、映画史上最も見事なラストシーンとされるものです。

ハリー・ライムを埋葬後、並木道(ウィーンの中央墓地)を歩いて去る、アリダ・ヴァリが演じるハリーの愛人アンナ・シュミットを、彼女に好意を持つジョゼフ・コットンが演じるホリー・マーティンスがやり過ごし、車から降りて待ちますが、ハリーの逮捕に協力したマーティンスを許さない彼女は、彼を一瞥もせず通り過ぎてしまいます。

一方マーティンスも、彼女に声をかけたり追いかけたりせず、煙草に火を付けて投げ捨てるだけです。

その間カメラを動かさず辛抱強く長回しする撮影には感嘆するほかありません。

 

あるブログは「ツィターの音も文句なくよく、落ち葉も程よく落ち」と評していますが、落ち葉の散り方は絶妙で、カメラの視野の外からスタッフが細心の注意を払って落としているとさえ思えます。

 

余談ながら、アリダ・ヴァリが着ているのは男物のトレンチコートで、衣装を担当したデザイナーのココ・シャネルが選びました。

 

https://www.youtube.com/watch?v=l64JIcG-O-k&feature=player_detailpage

 

メンデルゾーンのヴァイオリン協奏曲、鈴木直久

今日YouTubeの動画を聴いていたら、次の動画の欄に諏訪内晶子が演奏するこの曲がありましたので切り替えたところ大変な熱演であり、しかも録音がよいので最後まで聴いてしまいました。

調べてみて、戦後70年にちなみ日中友好の架け橋として、2015年10月31日に北京・国家大劇院音楽庁で行われたN響北京公演の、中国出身の作曲家譚盾(タン・ドゥン)指揮の、NHK交響楽団と諏訪内晶子の演奏であることが分かりました。

諏訪内晶子は1972年2月生まれですから当時37歳、1990年チャイコフスキー国際コンクールのヴァイオリン部門で、全出場者最年少で第1位、日本人初、全審査員の一致による優勝という快挙を達成した人です。そのうえに美人です。

彼女が使用しているヴァイオリンは、ストラディバリウスの三大名器の一つ、あのハイフェッツが使用していたドルフィンだといいますから、音が素晴らしいわけです。

約28分かかりますが、できれば最後までお聴き下さい。

https://www.youtube.com/watch?v=JLcwPFiYcUE&feature=share

年末のご挨拶 、管理人 前田和男

今年も年末となりました。今年も皆様のご協力により御投稿を頂き無事ホームページを維持することが出来ました。2020年もよろしくお願い致します。今年は、義兄が病で逝去され悲しい年でしたので、新年のご挨拶はご遠慮させて頂きました。

ギャラリー前田(http://gallery-maeda.com)は只今、急にプログラムがおかしくなりました。実はD38のホームページもプログラムのPHPは古いもの(Ver5.6)使っています。ギャラリー前田も同じでしたが、セキュリティーおよび速度の点でバージョンアップの勧めが有りましたが、完全移行までに試行錯誤することがあるとの助言があったので、とりあえず、私の個人ホームページを先行させました。というわけで、水彩画の方のホームページは正月中に勉強して正常にしたうえでD38の方に取り掛かります。

以上 よろしく 2019/12/31 前田

原因が判り、復旧しました。   2020/01/01      前田

2019年美術・博物館・遺跡巡りのまとめ 、山本 雅晴

 今年も特定のジャンルや場所を決めずにあちこちの美術館や世界遺産・社寺を120件ほど巡った。国内の美術展は百花繚乱で西洋美術の内容のある展覧会も多かった。2月下旬に南フランスに行き、ニースのマティス美術館やヴァンスのロザリオ礼拝堂、カーニュ・シュル・メールのルノワール美術館、エクサンプロヴァンスのセザンヌのアトリエなど今まで行っていない美術館や展示品を見ることができた。また、10月下旬に念願の「シルクロード」を訪れることができ玄奘三蔵の辿った風景の一部や平山郁夫の描いた場所を多少とも理解できたのは収穫だった。 今年見た美術館・博物館・世界遺産・寺社などを抜粋して簡単にレヴューします。

 

Ⅰ、2019年の美術館めぐりのまとめ

1、南フランスの美術館と早春のフェスティバル:旅行記としてまとめたので詳細は省略。

1)マティス美術館(ニース)とマティス関係の美術作品について:今年はマティス生誕150年になるので小生なりにまとめようと思い伝記や作品の調査を行なっているが未完成で来年以降に継続となった。今年見たマティス作品は国内外で約50点。

2)ルノワール美術館と庭園:ルノワールが晩年の十数年リュウマチと戦いながら絵を描き続けたカーニュ・シュル・メールの樹齢数百年のオリーブの茂る小高い丘にある邸宅・アトリエが美術館となっている。各部屋にルノワールと友人の絵・彫刻・工芸品が展示され自由に鑑賞できた。スッキリ晴れ渡った早春の庭は時間を忘れてしまいそうな居心地の良いところだった。

好々爺のルノワールのもとには南仏にアトリエを構えるマティスがボナールと度々訪れたらしい。かの気難しいセザンヌとも交友があった。

3)エクサンプロヴァンス:松の木とアーモンドの花咲くレ・ローヴの丘のセザンヌのアトリエを初めて訪れ数多の作品に使用されたりんごなどの果物やビン・壷・石膏像のある部屋を見た。また、見晴らしの良い丘からは小さいサント・ヴィクトワール山もくっきりと見えた。

短時間の休憩時間に彼の地の「グラネ美術館」本館を初めて訪れた。セザンヌの小品が10点ほど展示されていた。偉大なる画家セザンヌの故郷にしては寂しい展示であった。

 

2、国内の西洋画・彫刻などの展覧会

1)国立西洋美術館:本年開館60周年の記念の年である。振り返ってみれば、大学に入学した開館の1959年の夏休みに従兄弟に案内してもらって訪れていた。それ以来約80回くらい訪れている。このメモリアル・イヤーの展示会があった。

① 林忠正(1853~1906)の功績紹介展(2019-2-19~5-19):西洋で日本美術を商った初めての日本人で、1878年のパリ万博の通訳として渡仏し、ジャポニズムの隆盛に大きな役割を果たした。浮世絵や工芸品を扱う商社を経営・紹介する一方、松方幸次郎に先立つ25年前に西洋美術を収集し西洋美術館建設を夢見ていた。しかし、その構想は林の帰国と早すぎる死によって実現しなかった。これらの経緯を資料と作品を基に紹介している。日本における西洋絵画館の歴史を知る上には時宜を得た展示会であった。

松方コレクション展(2019-6-11~9-23):「松方幸次郎のコレクションの形成と散逸」について徹底的に調査し、それをカタログレゾネとして昨年出版された。この内容を拾い読みしたが、今まで不審に思っていたいくつかの疑問が解けた。その一つは松方コレクションの形成時にマティス作品がたくさん出回っていたのに国立西洋美術館に一点もないことだった。実際には6点収集していたがコレクションをナチスの略奪から逃れるためパリから寒村に移動させる必要があった。その費用を捻出のため売却した。6点のコレクションのすべてはまだ分かっていないが、そのうちの1点がバーゼル美術館の所有で今回展示されていた。

モネ作品はモネのジヴェルニーの住居兼アトリエまで行って直接購入している。一時は30点近く収集したが国内外で散逸の憂き目にあい、現在の国立西洋美術館にはその約1/3しか残っていない。また、ロダン彫刻の購入も綿密かつ大胆で松方の人柄を表しているように思われた。まだまだ興味が尽きないが割愛する。

2)クリムトとウィーン・モダーン展

① 東京都美術館:「クリムトとウィーンと日本1900年」(2019-4-23~7-10) 老若男女問わず何故かクリムト人気は大変なもの! 26年前の夏にウィーンのオーストリア美術館で初めてクリムト作品を見に行ったときは人影もまばらだった。今回は何点かの目玉作品と宣伝効果もあり大盛況だった。分離派会館の「ベートーベン・フリーズ」の精巧な原寸大複製(2.2×34.5m) 壁画が展示されていた。東京都美術館での展示方法もうまく、見栄えのするカタログも好評であった。

② 国立新美術館:「ウィーン・モダン~クリムト・シーレ世紀末への道」(2019-4-24~8-5)

18世紀半ばからの啓蒙主義時代から19世紀末・20世紀初頭のクリムト・シーレに至る社会情勢の変化、絵画・彫刻・工芸や文学・音楽・建築・ファッションなど相互的かつ総合的に展示・解説してあり理解しやすかった。

③ 目黒区美術館:「世紀末ウィーンのグラフィック」(2019-4-13~6-9) 上の2つの展示会との三部作で地味であまり入場者は多くなかったが、企画者の苦労と努力のにじみ出た展覧会で好感が持てた。

3)印象に残った美術展

① 新・北斎展:森アーツセンターギャラリー(2019-1-17~3-24)

著名な浮世絵研究者で北斎作品のコレクターだった故永田生慈氏の北斎とその弟子の作品約1000点が島根県立美術館に寄贈され、そこでの一連の展覧会に先立って開催された。北斎の初期から晩年までの貴重な作品が展示されていた。

② ギュスターヴ・モロー展:パナソニック汐留ミュージアム (2019-4-6~6-23)

     パリのギュスターヴ・モロー美術館の所蔵品で初期から晩年までの油彩・ドローイングを約70点まとまりよく展示されていた。大作はないがパリの美術館では作品数があまりにも多く、ドローイングなど見るゆとりはなかった。

③ 東京都現代美術館:リニューアルオープン記念展「百年の編み手たち~流動する日本の近現代美術~」(2019-3-29~6-16) 約3年かけてリニューアルしバリアフリー化などかなりの費用をかけているようだ。日本の近現代美術では国内で一番作品の充実している所だと思うが、画家個人個人の作品が羅列的でまとまりがないように思えた。あまり好みではないが、現代美術はアメリカで見た「サンフランシスコ近代美術館」のように広い空間を個人に一室単位で展示する方が良いように思う。

東京都以外の予算のとれない美術館はリニューアルができず四苦八苦している。    例えば、京都市美術館は京セラから約50億円の資金援助を受け「京都市京セラ美術館」として来年度からまさにリニューアルオープンするらしい。滋賀県立近代美術館はリニューアルがペンディングとなっている。美術館などは約20年で設備のリニューアルが必要になるためこのようなケースがこれから頻出する可能性がある。

④ ドービニー展:東郷青児記念損保美術館(2019-4-20~6-30) ドービニー個人としての展覧会は今回が日本では初めてとのことである。ドービニーは印象派の画家たちやゴッホなどの画家にも影響を及ぼした。アトリエ舟を考案し川を移動し川から風景を描いた。モネはこれをマネした。ドービニーの作品がまとまった形で見られよい展示であった。

なお、この美術館は42階から地上に新設移転し「SOMPO美術館」と名称も変更し,2020年5月末に開館とのこと。

⑤ 文化村ザ・ミュージアム

・「印象派への旅~海運王の夢~」(2019-4-27~6-30) バレル・コレクションとして英国のグラスゴーの美術館に拠点おいている。19世紀半ばから19世紀末のフランス絵画と英国の画家の絵画80点の展示があった。あまり大作はなく印象のうすい展示会だった。

・「リヒテンシュタイン侯爵家の至宝展」(2019-10-12~12-23) ルーベンス・ルーベンス工房の絵画が4点、クラナッハが3点他風景画・花の静物画などと東洋およびウィーン製の良質の陶磁器・工芸品が多数展示されていて一応楽しめる展示内容だがインパクトに欠ける。

⑥ コートールド美術館展:東京都美術館(2019-9-10~12-15) 1997年に初めて来日した時と内容的にはほぼ同じでマネ、セザンヌなどのすばらしい作品を鑑賞することができた。

⑦ ゴッホ展:上野の森美術館(2019-10-11~2020-1-13) 大作は少ないが初来日の初期の作品が多い。ゴッホというネーム・ヴァリューで全日混んでいるようだ。

⑧ カラヴァッジョ展:名古屋市美術館 (2019-10-26~12-15) 札幌・名古屋・大阪と関東地区に来ない数少ないケース。真偽が不明なものも含めて10点近いカラヴァッジョ作品で、初見の作品も数点あった。それほど混んでなくてゆっくり鑑賞できた。

⑨ ハプスブルク家展:国立西洋美術館 (2019-10-19~2020-1-26) ウィーン美術史美術館の作品が主体でお馴染みのベラスケス作品が3点とブダペスト西洋美術館からのベラスケス初期作品「宿屋のふたりの男と少女」も来ていた。展示様式はハプスブルク家の各皇帝のコレクションの形成の歴史。この展示会もネーム・ヴァリューのせいか国内外の鑑賞者で賑わっていた。国内の有名展覧会は日・英・中・韓の4ヶ国語のタイトル表示となっている。

⑩ ブダペスト「ヨーロッパとハンガリーの美術400年」:国立新美術館(2019-12-4~2020-3-2) ハンガリー国立西洋美術館の作品とハンガリー・ナショナル・ギャラリーのハンガリーの画家の作品130点の展示があった。クラナッハ、ティツィアーノ、印象派数点とムンカーチ・ミハーイ(ハンガリーの著名な近代画家)数点。やや焦点がなく希薄に思えた。

⑪ オランジュリー美術館の作品展:横浜美術館 (2019-9-21~2020-1-13) 20年前にもほぼ同じ作品展が文化村ザ・ミュージアムであり鑑賞している。日本人好みの画家の作品が多く何度見ても楽しい。ルノワール:8、セザンヌ:5、マティス:7、ピカソ:6 等々。

⑫ 吉野石膏コレクション展:三菱一号館美術館 (2019-10-30~2020-1-20) 山形美術館での委託展示や文化村ザ・ミュージアムでの展示会などでも見ているが、その後の入手作品?のゴッホの「白い花瓶のバラ」は初見だった。作品の内容はオランジュリー美術館と類似しており日本人好みである。

⑬ 大浮世絵展:江戸東京博物館 (2019-11-19~2020-1-19) 5年ごとに開催される国際浮世絵学会に合わせて開催されている。今回は5大人気浮世絵師の歌麿、写楽、北斎、広重、国芳の代表作品を世界の美術館から集めて展示している。展示替えが数回あるため前・中・後期と見る予定。今までにも浮世絵はたくさん見ているがこれで打上げにするつもりです。

なお、今年の浮世絵展では東京国立博物館で、松方幸次郎がパリでまとめて買い取り国に寄贈した約8000点のうち約120点を選び4期に分けて展示されたので鑑賞した

⑭ 薬師寺:2017年に完成した食堂の田淵俊夫の50mに及ぶ壁画「阿弥陀三尊浄土図・仏教伝来の道と薬師寺」は繊細な線と水彩画のような淡い色彩で平山郁夫の「大唐西域壁画」の油彩画的な重厚さと好対照だった。シルクロード訪問の締め括りとして再度見学した。

⑮ 後藤純夫の全貌展:千葉県立美術館 (2019-11-2~2020-1-19) この人は僧侶の家に生まれ、僧侶としての修行をしながら画家を志し日本画家となった。画題は平山郁夫に近く、多分あまり知っている人はいないと思うが、私は好きで以前から何度か展覧会を見ている。また、十年前に上富良野にある後藤純夫美術館を訪問した。中国の山河や北海道・奈良などの自然や寺院を綿密かつ大胆に描いた大作が多い。今回は初期の作品から晩年(2016年に死去)の作品まで展示されていた。千葉県は文化後進県で本美術館はあまりよい企画展がないので久しぶりに訪れた。数年前にリニューアルし、照明もよくまた、天井も高く大きな部屋もあり襖絵などの大作を見るのに適していた。このような良い展示会で65歳以上は無料だと聞いて改めて見直した。近くの人で関心のある方は是非見てください。

⑯ 東京国立博物館:年間12回ほど見ている。常設展示は65歳以上は年齢の証明書で無料です。国宝や浮世絵などは毎月展示替えがあり、他の展示品も3~4か月で展示替えする。

上野に行ったら気楽に立ち寄る。また、国立西洋美術館も常設展示は65歳以上は無料です。

 

今年の小生の分野別ベスト・ランキングは以下の通りです。

1、油彩画・西洋画

① マティス美術館(ニース) & マティス・ロザリオ礼拝堂

② 国立西洋美術館:「松方コレクション展」

③ 東京都美術館:「クリムト展~ウィーンと日本1900年~」

④ 名古屋市美術館:「カラヴァッジョ展」

⑤ 東郷青児損保ジャパン美術館:「ドービニー展」

⑥ パナソニック汐留ミュージアム:「ギュスターヴ・モロー展」

⑦ 上野の森美術館:「ゴッホ展」

⑧ 東京都美術館:「コートールド美術館展」

⑨ 横浜美術館:「オランジュリー美術館展」

⑩ 三菱一号館美術館:「吉野石膏コレクション展」

 

2、日本・東洋の美術・遺跡・その他

① 敦煌・莫高窟と周辺の遺跡および鳴沙山・月牙泉

② 高昌故城とトルファン周辺の遺跡

③ 西安城壁 & 大雁塔と兵馬俑坑博物館

④ 江戸東京博物館:「大浮世絵展」

⑤ 千葉県立美術館:「後藤純夫の全貌展」

⑥ 森アーツセンターギャラリー:「新・北斎展」

⑦ 東京国立博物館:「正倉院の世界 展」

⑧ 渋谷区立松濤美術館:「久保惣美術館所蔵 日本・東洋 美のたからばこ 展」

 

以上