名工大 D38 同窓会

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日本の土はなぜ酸性なのか?

日本の土はなぜ酸性なのか?


昨年末に西村さんから投稿がありました。新年元旦にアップロードすることにしました。(管理人)

                    2019年1月1日   西村 和晃記

 

私がここ酒々井に住み着いて依頼30年以上にわたって自宅近くの猫の額ほどの土地にいろいろな植物を植えてきた。そしていつも不思議に思っていたことが、どの参考書を読んでも畑に植物を植える前には必ず石灰又は苦土石灰を漉き込んで中和しなさい、とあることでした。

私は、このことを今までは、空気中の炭酸ガス(CO2)が雨水に溶け込んでできる炭酸水(H2CO3)が主な原因だろうと思っていた。

しかし今回この本(*1)を読んで真の原因が、植物を植えそれが成長し作物を作ること自体にあることを教えられた。

我々工業化学を学んだもののちょっとした知識として、このことを皆様にも知ってもらいたいと思い、筆を執りました。

ここでは上記著作の中で私の間違いを正してくれた件のみについて記載しておりますが、それ以外の興味ある方は原著を読んでいただきたい。

表題:日本の土はなぜ酸性なのか?

農家の方々をはじめ、素人の我々でも畑で何か植物を植える時には必ず1m2当り100grから150grの石灰又は苦土石灰を漉き込むように参考書には書かれているが、これは土壌が非常に酸性であり、このままでは植物が生育しないので、それを中和して植物が生育しやすいようにするためであることは参考書にも書いてあるがその原因については全く書かれているものを見たことがない。上記著者の調査によると、日本の土壌ではpHが3~4くらいの酸性となっているとの事である。(ちなみに雨水のpHは6程度との事)

 

ではなぜ日本の土壌は酸性なのか?

植物の根や微生物も人間や動物と同じ様に生きるために呼吸をし、その結果CO2ガスを出している。特に日本では高温多湿の為にその活動が旺盛で放出されるCO2の量は大量である。更に土壌が酸性になるもっと大きな要因は根や微生物から有機酸(クエン酸やリンゴ酸など)も放出されるからであるとのことである。

日本の土壌が酸性に傾いているのは農業にとっては問題だが、その酸性物質を溶かし込んだ水は岩を溶かし土へと変える。そしてその土からはミネラル類(カルシウムやマグネシウム、その他)が放出され一部は植物や微生物に吸収されそれらがさらに風化を促す。

このようにして日本の土壌は非常に速い速度で作物に適した土壌を生産していることになる。(*2)

 

上記で生物(根や微生物)から有機酸が出て土壌が酸性になることは分かった。

しかしその結果新たな疑問が出てきた。即ち

1. 生成される酸はクエン酸やリンゴ酸などというが、その他にはどのような酸が出ているのか?

2. それらの有機酸は、生物の活動のどの過程でどのように作られるのか?

3. 植物の種類によって排出する有機酸の成分や濃度に違いはあるのか?

4. またそれらの成分や濃度はどのようか?

5. それらの有機酸は地中で、又は地表に出てからどのように中和されるのか?(*3)

6. 又は中和されることなく川から海に出て海の酸性化を促進しているのか?

 

上記書では土についての研究であるので私の疑問には回答は述べられていないし、私自身も今までに聞いたことがない。

皆様の中で少しでも参考になることをご存知でしたら是非教えて下さい。

(*1): 藤井 一至著“土 地球最後のナゾ/100億人を養う土壌を求めて”

(*2):植物が育つためには①土(これはその粒子の大きさによって,砂(荒い砂ともっと細かい砂(2mm~0.02mm))、シルト(0.02mm~2μm)、粘土(2μm以下)に分けられる。)と②腐植(*4)と③水とが絶対的必要である。

 (*3): 山に登った時に湧き水を飲む機会は多かったが、pH3くらいの水を飲んだ時に決して酸っぱさを感じなかったので、地中のどこかで中和されていると思うがーー。

(*4):腐植とはその名の通り”腐った植物“に由来する。落ち葉や枯草や根といった植物由来の遺体に限らず動物や微生物の遺体や糞などもその材料になる。これらの生物遺体が原形をとどめないほどに細かく分解され腐葉土となり、更に変質して腐植となるのである。

上記①の粘土と②の腐植とがミミズやアリ、ヤスデ、ダンゴムシなどが混ぜ込んで植物が成長できる土壌となる。

 

 

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コメント

  • 宮口 守弘 より:

    竹崎さん
     土壌の酸性化に関するネット検索の結果の情報のコメントありがとうございました。西村さんの情報と併せて土壌に関する知識が少し増えました。
     雨量の影響のメカニズムも理解が進みました。
     油粕など窒素が多い肥料の使い方にも注意が必要であることも認識しました。
     竹崎さんは古典の詩歌にも興味を持ち、素数に関しても造詣が深いのですが、この様に土壌に関してもネット検索される実行力には
    感心します。
                 2019年1月6日 宮口 守弘記

  • 竹崎 より:

    西村さん

    竹崎です。土壌の酸性化の原因が作物から出る有機酸だとは全く知りませんでした。科学的根拠があるのでしょうね。少し解せないのは、日本の土壌に限らず、全世界の土壌に共通するのではないでしょうか。そうだとすると、人手の加わらない全世界の土壌に共通する現象ではないでしょうか。そうだとすると、年月を経るに連れて、酸性に弱い殆どの植物は絶滅していく運命にあるのではないかと思いますが、現実にはそうではなさそうですてね。

    ネット調査では、土壌酸性化の一因として「腐植酸」もあるようですが、主要原因ではなさそうですね。

    そこで、ネット検索したら、次のような解説(http://www.takii.co.jp/flower/bn/sample/20110435.pdf#search=%27%E5%9C%9F%E5%A3%8C%E3%81%AE%E9%85%B8%E6%80%A7%E5%8C%96%27)がありました。
    「概していうと、土の中にしみ込んだ雨が土の中のカルシウムやマグネシウムなどのようなアルカリ性を示すミネラルを地下に流してしまうからです。そのため、雨が多い日本の気候条件ではほとんどの土が酸性になっています。」、「雨のほかに、もう1つ土を酸性にする原因があります。それは、肥料(特にチッソ肥料)のやり過ぎです。野菜に必要以上のチッソ肥料をせば、チッソが硝酸イオンという形態で土の中に残留します。この硝酸イオンは土に吸着されにくいので、雨が降ると地下に流れてしまいます。その際、硝酸イオンは土の中のカルシウムイオンやマグネシウムイオンと結合した形態で流れますので、土の中からカルシウムとマグネシウムが少なくなり、酸性化します。例えていうと余分に残ったチッソ肥料がカルシウムなどと「駆け落ち」してしまうのです。」(後藤 逸男 東京農業大学応用生物科学部生物応用化学科教授。専門分野は、土壌学および肥料学。)

    もう一つ紹介します。
    (http://www.hiryou.hokuren.or.jp/qa/q02_08_02.html)
    「3.土壌が酸性化する原因
    (1)雨水による酸性化土壌のpHは雨量が多いと低下します(図2)。理由は、雨水がpH5.6前後の炭酸水で、土壌粒子の表面の塩基を次第に溶脱させ、水素イオンが多くなるからです(図3)。当然、硫酸や硝酸を含んだ酸性雨は土壌の酸性化を強めます。

    (2)施肥による酸性化
     施肥は、短期間に酸性化を進めます。例えば、硫酸アンモニウムを施肥すると、[1]アンモニウムが硝酸イオンに変化するときに、また[2]土壌に残った硫酸や硝酸イオンによっても、水素イオンが増えpHは下がります。その上、[3]硝酸や硫酸イオンは土壌粒子の表面の塩基類を溶脱させるため、粒子表面に水素イオンが結合して酸性化します。

    (3)作物による収奪
     作物はかなり石灰を吸収します。当然、収穫物による石灰の持ち出しは土壌の石灰を減らし、酸性化の一因となります。

    (4)その他の酸性化の要因
     泥炭土壌や腐植土壌では腐植の主要部分の腐植酸が酸性を呈します。また、海成堆積物中に存在する硫化鉄の酸化に伴う硫酸の生成も酸性化の原因となり、客土材を選定するうえで、注意が必要です。 」

  • 宮口 守弘 より:

    西村さん

    家庭菜園を楽しんでいる私には大変興味深い投稿で参考になりました。
    有機栽培に心掛け、肥料は牛糞堆肥や鶏糞、油粕などを使っています。牛糞堆肥はPHが6.7程度ですので苦土石灰を余り使用しませんが、ゴボウやほうれん草には使います。

    土が酸性になるのは酸性雨のためと思っていましたがそれだけではなく、植物の成長は微生物の分解が大きく影響していることは知りませんでしたので勉強になりました。枯草や堆肥での土づくりをやっていますのでまた新たな課題が出てきたような気がします。機会があれば情報を集め、より良い土作りに挑戦したい思います。

                  2019年1月4日 宮口守弘