Ⅱ
2.衛生感覚
日本のように、靴を脱いで部屋に入る、上がるという生活ではない。ホストファミリーの娘の家の前に芝生の庭がある。そこにブランコが設置されていて、孫娘はそこで素足で遊んだ後、自分の部屋にもそのまま入る。あるいは靴を履いたまま自分のベッド・机のある部屋に入る。信じられない。
教室は無論 靴のままで出入りする。その土足OKの床の上で、トランプをべたっと直に並べてゲームする。地べたリアンなどは当たり前である。
勿論 教科書(個人では持たず、生徒より少ない冊数が教室に置いてある、)の扱い方も、机の上だけでなく土足OKの床の上に広げる。子供が駄々をこねたときのように、床の上に直にベタっと寝っ転がるのも見かける。
日本でO157がかなり話題になった時期の後だったが、彼らは、O157の話はまるで知らなかった。
やはり、湿度が日本と違って低いから、あまり細菌に関して神経質ではないのか?
何れも日本の衛生感覚からすると信じられないことである。
3.日本のカレーライスとお好み焼き
IIPの事務局から日本の料理を紹介するのに、日本のカレーライスとお好み焼きが、簡単で、受けるよ とアドバイスをもらっていたので、どこにでも売っているカレーライスのルーと、お好み焼きができるように食材を用意していった。
やはり、料理の場に出くわして、「じゃ、今日は僕が料理しましょう」と言って、日本の標準的な流し台より高い流し台を使って(疲れる!)、冷や汗をかきながらカレーライスを振る舞った。ホストファミリー(娘の家庭全員も含めて)は、一同正座して僕の料理を待っている。恐る恐る皿に盛って振る舞う。「Oh、Good!!」である。カレーのルーはアメリカでも日本製が売られているが、1.5倍以上高い。
別の日には、いろいろトッピングしてお好み焼きを作って振る舞った。「Japanese Pizza!!」と言って絶賛だった。
さらに、別の日には、ホストファミリーの仲良し家族、孫娘たちの友達を集めてのパーティ、そこでもお好み焼きを振る舞い、さらには魚屋専門店で買った「マグロの刺身」を振る舞った。
あっという間に「刺身がおいしい」と言って、僕など一かけらも試食しないうちに終わってしまう、お好み焼きに至っては、そのレシピーから詳細にメモしていた。
お世辞半分としても「日本からシェフが来た!!」と大喜びだった。
我が家では、女房からいつも言われている、「あなたの料理は犬の餌だ」と。アメリカでは立派なシェフだった。女房がここで料理すれば、帝国ホテルかホテル大蔵の立派なシェフか?
4.アニメ、漫画
日本のアニメ、漫画、ゲームは日本の立派な文化として認められている。日本のアニメにあこがれる生徒は多い。「日本のアニメの学校(京都精華大学)に留学したいが、推薦状を書いてくれ」とまで言ってきた生徒もいる。
授業で簡単なテストをする。書き終わってしまってちょっと時間的な余裕があると、テスト用紙の裏に漫画を画く、それが一人や二人ではない。
習字を紹介して各生徒に書かせても、時間の余裕があれば、筆を使って漫画描きである。
言うまでもなく、アニメーション、コミックは立派な日本の文化であり、彼らの憧れの的である。
5.習字(Calligraphy)
これもIIP事務局から、習字をすると絶対受けるとアドバイスをもらっていたので、硯と墨と毛筆10本以上を用意していった。
墨を硯で磨るところから始まるインクに神秘性を感ずるらしい。それに加えて、漢字の面白さ、彼らにとっては、字を書くというより、絵を描く、芸術そのものであろう。
生徒のリクエストに応じて「夢」「愛」「恋」「希望」、、、、それに象形文字らしく「月」「日」「家」「馬」、、、を紹介すると、眼を輝かせる。
しかし、当たり前だが、習字における漢字のハネ、トメ、ハライなどは、まるでできない。とにかく真っすぐ棒を引くだけだし、形だけ同じような形になっていればよいのであって、書き順などはメチャクチャである
LASA高校だけでなく、比較的近隣の別の高校でもホストファミリーのコネで、1コマ出張授業で日本紹介の話と習字の実習をした。小学校でも呼ばれて習字の実習をした。
背筋を伸ばして習字をするのに、その姿勢は、ものの10分ももたない。思い思いの字を描いて本当に楽しそうだった。
前記の呼ばれた高校では、習字をする前に、日本紹介の一つとして、日本の結婚式及び昔型(僕の頃の)結婚式を紹介し、恥ずかしながら、僕の結婚式後の集合写真も見せた。花嫁は文欽高島田で、父親は羽織袴だった。
「侍だ!」「刀をさしていない」はいいが、「この楽しかるべきセレモニーになぜ皆難しい顔をしてるのか?スマイルがない?」「日本人は皆 生真面目だから、難しい顔をしているのだ」と。
6.離婚・社会格差
離婚は本当に多い。わずか3カ月弱の滞在中だけでもどれだけ生徒の親の離婚があって、生徒がなんとなく情緒不安定に変化していったことだろう。「離婚して父親(母親)と別れました」いう情報が入ってくる。大変多感な少年少女時期、やはりどういう理由にしろ、親と一緒に生活できないのは、生徒を精神的にも不安定にさせる。
日本語の練習の中でも「あなたは誰と住んでいますか?」という文型を練習する。生徒は素直に本当のことを話す。「母と、母のボーイフレンドと住んでいます」。普通のことである。
テキサス州にはメキシコに近いこともあって、メキシコ人が多い。一般的に言って、アングロサクソン系白人、ヒスパニック系、黒人の三層に、なにかにつけ別れる。富める層から貧困家庭もこの層に分かれる。離婚率もこの順番である。そして、人の肥満率もこの順番であるという。貧困層は、ハンバーガーとコカ・コーラを飲んで飢えを凌ぐことが多く、カロリーだけは高いから肥満になるという理屈らしい。学歴、失業率、犯罪、全てがこの順である。これらについて当時のNewsweekにも詳細なデータとともに記載されていた。