このような短文、小文、エッセー等は大歓迎です。(管理人)
今春のある日、市立図書館で英文学の文庫本の棚を何気なく眺めていたら、「モームの謎」という岩波現代文庫が目に入った。モームという名前が懐かしかったので借りて読んだ。
著者は行方昭夫東大名誉教授で、今世紀に入ってから岩波文庫にモームの代表作の新訳を多く入れてきたモームの専門家であることを知った。
モームが懐かしいのは、「人間の絆」、「月と六ペンス」、「お菓子とビール」などの長篇、「雨」などの短篇および回想録「要約すると(Summing Up)」を1970年代に新潮文庫で、そして1990年代にちくま文庫に入った何点かを読んだからである。
そこでこの機会に、以前に読んだ数作品を再読するとともに新たに数作品を読んでみた。それらの他に短篇40数作品を読んだ。
やはりモームは面白い。プロット(筋)が巧みに構成されており、文章は平易で読み易いから、読者はページを早くめくりたくなる。そのうえ特に得意とする短篇の多くにはアッと驚くようなオチ(落ち)がある。
だから諸兄のうちの多くの方がモームを読んだことと思うが、そうでない方には、先ず「雨」、「赤毛」および「手紙」の3つの短篇を読んでみられるようお勧めしたい。一日以内で読めるからである。
1940年(ぼくが生れた年)に、日本に初めて紹介されたのは中野好夫訳雨:他二篇(岩波文庫)によってであるが、他の二篇は「手紙」と「赤毛」であった。100篇を越える多くの短篇からこれら3篇を選んだ氏の慧眼に感嘆する。
鈴木直久様
このところ皆さんの素晴らしい投稿の連続でコメントしようと思っているうちに鈴木さんの素晴らしいモーム論に出会いました。
鈴木さんの博識には敬服していますがモームの月と六ペンスで思い出したことがあります。
確か教養課程の文学の授業で全員に読後感を提出する宿題があり、その時の私の取り上げたのが「月と六ペンス」でした。 画家のゴーギャンをテーマにした作品と言われていますが、今ではなぜこの作品を取り上げたのかは思い出せません。鈴木さんの投稿を見てモームのことを思い出しました。
教養課程の担当教授は理系にしては随分文学的な読後感で素晴らしいという賛辞があったことを記憶していますが、今では鈴木さんや、井上さん、竹崎さん等のことを評価されたのではと思っています。
モームの短編読み直してみます。
2019年6月10日 宮口守弘記