名工大 D38 同窓会

名工大 D38 同窓会のホームページは、卒業後50年目の同窓会を記念して作成しました。

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前田・宮口・三山
2018年美術館巡りの回想―2,山本 雅晴

2018年美術館巡りの回想―2,山本 雅晴

 今年も特定のジャンルや場所を決めずにあちこちの美術館や社寺を百件強巡った。国内の美術展は百花繚乱で西洋美術の内容のある展覧会も多かった。また、名古屋ボストン美術館展の最後の展覧会「ハピネス展」に行ったので、過去20年の軌跡を辿ってみることにした。小生は名古屋在住が長かったので名古屋近辺の主な美術館を見て回ることも多かったので、名古屋ボストン美術館の開館当時から興味を持ってボストン美術館所蔵のいろいろの展覧会を鑑賞した。まだボストン美術館に行ったことがないので多少とも理解できたのは収穫だった。

 

Ⅱ、 名古屋ボストン美術館とその展覧会について(1999~2018年)

 

1、はじめに

名古屋ボストン美術館は1991年に名古屋商工会議所が設立準備委員会を立ち上げ、交渉を進め、財界・名古屋市・愛知県の出資・運営で1999年に金山駅に隣接したビルで開館した。

(詳細はウィキペディア:名古屋ボストン美術館に記載)

ボストン美術館の姉妹館として自身の作品・資料の収集・保有はせず、すべてボストン美術館から借り受けるシステムとなっていた。姉妹館契約は20年間、展示品の選定権はボストン美術館で他の美術品との併用展示ができないなどの不利もあった(~2006年)。また、20年間で約50千万ドルをボストン美術館に寄付する義務もあった。

しかし、世界有数で米国でも第3番目の所蔵作品数と質の高さを有する美術作品が20年間身近に展示・鑑賞できる、このシステムは画期的なことと思った。

 

2、展覧会と鑑賞の経緯

小生が名古屋ボストン美術館で鑑賞した展覧会は19回、同じ展覧会が東京・千葉で先行して開催されたものが2回であった。トータル62回の展覧会(うちボストン美術館の作品を含まない展覧会も数回ある)。約三分の一の展覧会を見た。詳細は添付ファイルを参照ください。

 

1)第1回「モネ・ルノワールと印象派の風景」:一般の人好みで、初回でもあり大いに賑わって、上々のスタートだった。入場者は70万人を超え、日本国内の他の展覧会の入場者数を制して1位だった(推定)。 ボストン美術館の年間入場者数はここ数年の平均で約115万人

であることから、この展覧会は誰の眼にも大成功と映った。

2)第2回以降、素人好みの展覧会内容から外れると、入場者数は当初算出していた33万人/年から大きく下回る20万人以下の結果が続くことになった。もともと33万人/年は無理な数字である。

3)それ以降もボストン美術館の作品で工夫しつつ日本人向けの企画がなされたが入場者数は低迷したままであった。名古屋ボストン美術館だけに頼ってはいられないと悟ったのか、東京圏や関西圏で最初に展覧会を開くようなこともなされた。

2012年の東京国立博物館で「ボストン美術館“日本画の至宝展”」は54万人の入場者数で国内の展覧会入場者数のベスト3と好評であった。名古屋ボストン美術館でも26.5万人で14位であった。

2017年には東京都美術館を皮切りに「ボストン美術館の至宝展」では西洋画・日本画・中国画およびエジプト彫刻などを網羅した「これぞボストン美術館」が開催された。東京での入場者は31万人強で、翌年の名古屋ボストン美術館でも好調だった。事実上これが最後の切り札と思われる。

その後も2017~18年に「ボストン美術館浮世絵:鈴木春信展」が千葉市美術館・名古屋ボストン美術館で開催された。内容的には良かったが、入場者数は限界がある。

小生は、2018年の最後の「ハピネス展」の最終日の10月8日の午後に行った。さすがに混雑していたが一応見納めができた。展示内容としてはあまり注目するものではなかった。

 

3、所感

小生は「名古屋ボストン美術館」は十分楽しめたし、全体的に見れば成功であったと判断している。しかし、当事者たち(財界・名古屋市・愛知県・美術館関係者)は失敗だったようなことを口にしていたし、そいう報道が主流である。たしかに、経済的に収入から支出を引いた金額だけ見れば5億円/年の赤字で総額100億円近くのマイナスである。しかし、有名な美術品は一点で100億円を超えるものはざらにある。この20年間で展示された美術品のトータルは数千億円以上の価値があると思われる。それらを数百万人の人が鑑賞できたことと、名古屋市周辺の集客による経済効果もあったはずである。美術館の運営にも問題はあったかもしれない。外国ではよく見受けられるが、小・中学生、高校生などの教育効果を重視し低料金・無料で見せるようなこともしたのかは知りませんが!

どこの美術館も単独で利益を得ようとすることは無理と思われる。教育効果・周辺への経済的波及効果も勘案し文化を育てるという長期的な視点がないとだめだと思う。名古屋は名古屋城と御殿再建に千億円を賭けようとしているがはたして文化的な魅力ある都市になるのか?

名古屋市の東新町に2010年に開館した「ヤマザキマザック美術館」はロココからエコール・ド・パリまでの素晴らしい絵画が80点位と彫刻、ガレ・ドームの工芸品などが展示されている。館内では欧米の美術館並みに写真撮影も可能で心地よい美術館である。それほど入場者も多くはない。

ここの美術館のオーナーは「名古屋ボストン美術館」の結末をどのように思ったであろうか?

 

以上                 2018-12-20

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コメント

  • 鈴木直久 より:

    名古屋ボストン美術館が開設されたことには、ご指摘のとおり大きな意義があったと思います。
    わたしはそこを訪れたことはありませんが、そのおかげで大阪で「ボストン美術館”日本画の至宝”展」を見ることができました(2013年)。
    ただし、採算性について当初から危惧していました。多くの人々が同様だったろうと思います。
    多くの美術館が赤字運営ではないでしょうか。
    滋賀県の状況を説明してご参考に供したいと思います。
    休館中の滋賀県立近代美術館を新生美術館として再生する計画が今夏凍結されました。
    江戸時代以前の美需品を展示、保管する琵琶湖文化館は休館したままです。 12月25日 鈴木直久