名工大 D38 同窓会

名工大 D38 同窓会のホームページは、卒業後50年目の同窓会を記念して作成しました。

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前田・宮口・三山
24日

ロンドン・ナショナル・ギャラリー展の「ひまわり」について 、鈴木直久

11月17日に大阪国際美術館でこの展覧会を見ました。新型コロナの感染対策のために、入場日時を指定したチケットをあらかじめ購入するという珍しい方式でしたが、その代わり混雑が避けられて、ゆっくり見ることができました。61点の出展作品がすべて初来日です。

そのなかで格別に思い出深い、ゴッホの「ひまわり」について書いてみたいと思います。

古い話で恐縮ですが、1986年にこの美術館(RNG)を訪れることができました。というのは、ヨーロッパ出張旅行の最終日にロンドン駐在員事務所に顔を出すことにしていたのですが、当日の朝、駐在員からホテルに、急用のため大陸に出張しなければならないとキャンセルの電話が入りました。その結果1日の自由時間ができたので、美術館訪に行くことを思い付いたのです。

信じがたいようなことですが、(当時も現在も)入場無料であり、快適なレストランでランチを安く食べることができました。

ただし、事前調査をしていなかったので何も分からず、イタリアルネサンスの部屋から順番に見ながら進みました。するとある部屋に入るやいなや眩しいばかりの衝撃を受けたのです。それがゴッホの黄色の「ひまわり」から発するものでした。照明にも配慮が行き届いていたのでしょうし、また多くの絵画を眺め続けて疲れ気味だったから尚更でしょう。本当に驚きました。

しかも同じ構図でほとんど同じ大きさ(と思った)作品が2点あるではありませんか。それらは同じゴッホの他の1点の作品「糸杉のある麦畑(F615)」によって隔てられていましたが、それも似た大きさの立派な作品です。麦畑は刈り入れ間近の黄色で覆われていますから、3点ともに黄色を基調としています。今思うに、中央の「糸杉のある麦畑」の遠景の山と空だけに清々しい青色が塗られていて、黄色基調の3点の画面全体を引き締めています。実に魅力的な配置でした。

ご参考のため上記3点のコピーを添付します。ただし、残念ながら横に並べることができませんでしたし、縮尺を揃えることもできませんでした。2点の「ひまわり」の色調の違いは主として情報源が異なるためだと思います。

RNGの「ひまわり(F454)」

RNGの「糸杉のある麦畑(F615)」

SOMPO美術館の「ひまわり(F457)」

ところで2点の「ひまわり」ですが、この展覧会を特集した芸術新潮の今年の4月号には、この美術館のゴッホのコーナーの写真がありますが、左から右の順に、「ファン・ゴッホの椅子(F498)」、「サンポールの病院の庭の草地(F672)」、「ひまわり(F454)」の順に並んでいます。ですから、当時私が見たときも「ひまわり(F454)」は左側にあったのだろうと勝手に想像しています。

ただし、F672と有名なF498を見たという記憶が全くありません。「ひまわり」に余程気を取られていたからだろうと思います。

ところが、私が見た翌年の1987年に、当時の安田火災海上(現・損保ジャパン)が、個人が所蔵していたもう1点のほう(F457)をオークションで、53億円で落札して購入し、大きな話題となりました。

それは現在ではRNG所蔵品のゴッホ本人によるコピーであると断定されていますから,似ているのは当然です。

現在SOMPO美術館で常設展示されていますからご覧になった方は多いことでしょう。また、RNGが所蔵する作品をこの展覧会(東京か大阪)でご覧になった方もいらっしゃるでしょう。

今回の展覧会で「ひまわり」は最後の部屋にこれ1点のみが展示されています。日本で非常に人気が高い画家の代表作にふさわしい位置付けですが、RNGでも状況は同じようで、最も人気があるのはゴッホだと説明されていました。

私も東京勤務時代に前者を何度か見ましたし、今回後者を36年ぶりに見ることができて満足しています。

もしもSOMPO美術館の「ひまわり」が大阪に運ばれて並べて展示されていれば、両者を詳しく比較してそれらの違いと魅力を一層深く理解することができただろうと思いますが、他の作品を含めて全てが初出展だというこの展覧会の売りとRNGのプライドとが、それを許さなかったのではないかと思います。

以上